妊娠中の治療について

妊娠中の治療について

コラム

妊娠中の治療について

2020.08.29

妊娠中はつわりで歯みがきが難しい日もあったり

ホルモンバランスや食事の好みの変化があったりと

口腔内のトラブルも起きやすい時期です。

今日は妊娠中に起こりやすい症状や、妊娠中の治療についてお話します。

~妊娠による口腔内の影響~

 ①「虫歯」や「歯周病(歯肉炎・歯周炎)」になりやすい 

以下のことから虫歯や歯周病のリスクが高まります。

・つわりで歯磨きができずに口腔内の環境が悪くなる

・間食の回数の増加や嗜好の変化(口の中に食べ物があることが多くなる)

・女性ホルモンの増加により唾液の性状が変化する

・ホルモンの変化により、歯肉が腫れやすくなる

妊娠中の歯周病は、母体だけでなく、早産や低体重児出産のように、胎児や出産にも影響する可能性があります。

出産が近くなると「プロスタグランジン」という物質が子宮で分泌されることによって分娩が始まります。

歯周病によって炎症が広がると、それを抑えようとして「プロスタグランジン」が作られ、分娩時と同じように子宮の収縮が促されるため、早産が引き起こされたり、低体重児で産まれたりというリスクが高くなります。

 ②妊娠中エプリース 

ホルモンの影響で、歯ぐきにこぶのようなものを作ることがあります。

良性であり、出産後消えることが多いので、外科処置は行わず経過を観察することが多いです。


~妊娠中の口腔内ケア~

虫歯や歯周病のリスクが高まる妊娠中は、

口腔内の環境を少しでも悪くならないように、お口の管理が大切です。

しかし、つわりで歯ブラシが難しいことも多くなると思います。

以下の点を気を付けてみて下さい。

もし歯ブラシをお口に入れるのも難しいようであれば、

無理をなさらず、フッ素入りの洗口液でゆすぐなど、できることをしましょう。

・喉にブラシが当たらないようにする

・調子の良い時に歯ブラシをするようにする

・数回にわけて磨くようにする

・ブラシのヘッドは小さめのものを選ぶ

・歯ブラシ剤は、においや刺激の少ないもの、泡立ちの少ないものを使用する

・奥に歯ブラシ剤が入らないように顔を下に向けるようにして磨く

・歯ブラシができない時は甘いものは控える

・特に唾液が少なくなる夜は虫歯になりやすいので間食しないようにする

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~妊娠中の歯の治療について~

おなかの中の赤ちゃんへの影響を心配して

歯の治療を躊躇する方も多いと思いますが、

基本的には治療を行ってはいけない時期はありません。

痛みでしっかり食事ができずに栄養が不足したり、

我慢していて精神的にストレスとなる方がかえって

赤ちゃんに悪影響な場合もあります。

もちろん、お薬やお身体の状態など気を付けなければならない点はありますので

お口の症状やお身体を状態をみて、治療や治療時期の判断をいたします。

母子手帳を提示いただき、産婦人科医から注意を受けていることがあれば必ずお申し出ください。

治療の際は、できるだけ楽な姿勢で受け、体調やご気分が悪くなった時はすぐに教えてくださいね。

・治療の時期

治療ができない時期は基本的にはありませんが、

お母さんやお腹の中の赤ちゃんの状態を考慮すると、

安定期である妊娠中期が治療に最も適しています。

・妊娠初期(~4カ月)

妊娠初期は、胎児の器官ができてくる時期です。妊娠中では一番不安定な時期です。

レントゲン撮影や投薬などに考慮する必要があります。

痛みがある場合は、除痛を目的とした応急処置程度の治療にとどめることが多いです。

・妊娠中期(5~7カ月)

中期は、最も安定している時期で、治療に最も適しています。

・妊娠後期(8~10カ月)

この頃にはお腹も大きくなってきて、

仰向けの状態ではお腹を圧迫し苦しいので、長時間の治療が難しくなります。

緊急性のない場合は出産後に治療を行います。

~レントゲン撮影の影響はあるの?~

虫歯の広がり具合や根っこの先の炎症、歯周病の具合や被せものの下の虫歯など

正確な診断や治療のためにはレントゲン撮影が必要なこともあります。

防護用エプロンをしっかり着用し、口元にだけレントゲンが当たるので

お腹に直接レントゲンが当たることはありません。

また放射線も微量なので、妊娠中においても、基本的にはレントゲンの撮影は問題ないとされています。

(当院ではレントゲンの撮影は、必要最低限にとどめています。また、鉛の入ったエックス線を通さない防護用のエプロンも必ず着用いただいています。)

~麻酔について

局所麻酔でごく少量であり、お腹の赤ちゃんへの影響はありません。

痛みを我慢するストレスの方が問題となるので、

治療中痛みがあれば、我慢なさらず教えてください。

~お薬について~

抗生物質や鎮静剤を用いる場合には注意が必要です。

妊娠中はお薬は出さないようにしていますが、

症状によって、薬を服用しないことで母体に悪影響があると考える場合には

比較的安全性が高く、安心して飲んでいただけるようなお薬を処方します。

抗生物質であれば、セフェム系およびペニシリン系、

痛み止めであれば、カロナールというお薬が比較的安全に使用していただけます。