痛みなどの症状もなく、見た目も問題なさそうに見えますが、金属の詰め物を外すと歯と詰め物の間がむし歯になっていました。むし歯をきれいにとって、「セラミック」の詰め物に替えました。この症例が特殊で珍しいということではありません。保険診療で使用されている金属は劣化が早く、しばらく経つと金属と歯の隙間ができて、そこからむし歯が再発するリスクが高いです。
口腔内の金属は、唾液や飲食物によって高温多湿の環境に常にさらされているため、少しずつ酸化して溶け出していきます。粘膜から吸収された金属の成分が血中に入り体内に蓄積されることで「金属アレルギー」を引き起こしたり、溶けた金属で歯茎が着色して黒ずんだり、詰め物や被せものと歯の間に隙間ができ二次虫歯の原因となります。
ここからは、セラミックの良い点をお話します。 (※患者様の噛む力の強さや詰め物・被せ物の本数、口腔内や被せ物の土台の状態などをみて、セラミック以外の治療をおすすめする場合もあります。)
~良い点①審美的!白さが続く~
セラミックは、保険診療に比べるとより天然の歯に近い色を表現でき、患者様の歯に合わせた色で作成するので審美的にとても優れています。
上の画像は使用5年後の比較です。保険適用のプラスチックの前歯の被せものは、白い色ですが「透明感」が無く、プラスチックは汚れもつきやすいので数年経つと写真のように変色します。
~良い点②汚れがつきにくい素材~
セラミックは表面がツルツル滑らかで、汚れが付きづらく掃除もしやすいです!「汚れがつきにくい」=「虫歯にもなりにくい」ということです。虫歯になりにくい素材ではありますが、長持ちさせるためには普段の歯ブラシをしっかりとして、定期的に歯科医院での健診に通うことが必須です。
~良い点③詰め物・被せものと歯の隙間が少ない~
セラミックの詰め物や被せ物は、シリコンを使って精密に型取りを行います。保険で使用する型取り用粘土と比べるとシリコンは変形しにくいので、詰め物や被せものはピッタリと合ったものを作ることができます。適合精度が高く歯と詰め物の隙間が少ないため、虫歯になりにくいです!
~良い点④金属アレルギーの心配がない~
冒頭で金属の詰め物や被せものは、「金属アレルギー」を引き起こす可能性があると説明しましたが、セラミックだとその心配がありません。金属アレルギーはアクセサリーが原因で起こるイメージがありますが、口腔内の金属からも起こります。ひどい場合、アトピー性皮膚炎や湿疹・味覚障害・脱毛症・手の平や足のうらに水膨れ膿が繰り返こる(掌蹠膿疱症)などの症状が出ることもあります。
このように、セラミックの治療は見た目だけでなく、口腔内や身体にも良い治療です!!
・セラミックは割れやすいの!?
10年程前まで歯科治療で用いられたセラミックは、硬度が高いあまりに柔軟性に欠け、強すぎる力を加えるとその力を拡散させることができず、欠けてしまう場合がありました。そのため割れやすいイメージを持たれている方もいらっしゃるかと思いますが、最近では以前よりも割れにくいセラミックが開発されたり、強度に長けたセラミックの種類もでています。
・セラミック?ジルコニア?詰め物や被せもの材質の種類まとめ
医院や作成している技工所によって同じ材料の被せ物でも呼び名が違うことがあるので混乱しますよね。セラミックの中にも種類があり、透明感や硬さなど少し異なります。患者様の噛む力の強さや詰め物・被せ物の本数、口腔内の状態を見て使い分けてご提案させていただいています。
★ジルコニア:セラミックの一種です。人工ダイヤモンドと呼ばれるほど硬度があり耐久性があります。奥歯など強度が必要な部位や、歯ぎしりや食いしばりする方、歯をあまり削れない場合にオススメです。(強度があるのでe-maxと比べると多少削る量が少ないため。ほんの少しです。)近くで見ないとわからない程度ではありますが、色の透明感が少ない白色なので、天然の歯と色をぴったりと合わせることが難しく、ジルコニアの詰め物(インレー)だと詰め物の色が少し浮いた感じがします。被せもの(当院ではフルジルコニア クラウン)も、単色のため前歯には適していません。前歯など目立つ箇所には、ジルコニアに後から色付けし天然の歯の色に近づけた「ジルコボンドクラウン」という種類がオススメです。
★e-max(イーマックス):ニケイ酸リチウムを主材としているため、ガラス系なのですが柔らかすぎず硬すぎないという優れた特徴を持っています。色の再現性が最も良く、一番透明感がありきれいに仕上がるので、天然の歯の部分とe-maxの詰め物の境目がわかりにくく自然な仕上がりになります。従来のガラスセラミックと比べると強度がありますが、ある程度の厚みがないと割れやすくなるため、ジルコニアインレーと比較すると歯を削る量は若干増えます。
★レーザークラウン:金属にセラミックを貼り付けて作成します。内側が金属なので強度があり、削る量もオールセラミックと比べると少ないです。内側に金属を使用するため、歯肉や歯が黒ずんできたり、経年的に歯ぐきが退縮した際、金属部分が黒い線として見えてきてしまうことがあります。また、金属アレルギーの可能性があります。
(同じような被せ物【レーザーボンド】→3Dデジタル技術で金属を加工して作ったものに、表面にセラミックを焼成したもの。【メタルボンド】→技工士が手で鋳造して作った金属の表面にセラミック焼成して作ったもの。)
★ハイブリットセラミック(ハイブリッドレジン):これはレジンという歯科治療用の樹脂(プラスチック)にセラミックの粉末を混ぜたもので、セラミックとは別物になります。従来の保険適用の素材(レジン)よりも少し丈夫ですが、それでも割れやすかったり、劣化が早く細菌が付着しやすかったり、しばらく経つと変色します。白色ですが、単色で透明感があまりありません。
※最近では、真ん中の歯から数えてCAD/CAM装置使用に限り、一部保険適用となりました。(当院では保険外治療でのハイブリッドセラミックは扱っておらず、保険適用のCAD/CAM冠の治療のみ行っています。)「CAD/CAM冠」とは、「ハイブリッドセラミック」のブロックをコンピューター装置によって削り出して作る被せ物です。ただし、保険適用される歯の部位や条件が細かく定められています。■真ん中から数えて4番目、5番目の歯:「クラウン(被せ物)」に限るので、「インレー(詰め物)」の場合は保険適用しません。2連以上の「ブリッジ(繋がった被せ物)」は保険適用しません。■真ん中から数えて6番目、7番目の歯:上記の条件に加えて金属アレルギーの方に限ります。※医療機関による金属アレルギーの診断が必要になります。
平成28年12月の保険改定により、下の歯の真ん中から6番目で金属アレルギーを有してない場合でも「第二大臼歯(7番目の歯)が全て残存する」場合に保険適用になりました。※ただし、過度な咬合圧が加わらない場合に限ります。
■歯の真ん中から数えて1番目~3番目は、レジン(プラスチック)での被せ物の保険適用可能です。強度を保つため金属の被せものに前面にレジンを貼り付けてあります。
★ゴールド:実は歯に一番良い素材です!金は延びる性質(展延性)に富み、適合精度が良く歯になじみます。かみ合う歯に最も優しい素材で、歯ぎしりや噛み締めが強い方にもオススメです。見た目を気にしない場合は、一番歯の素材として適しています。虫歯にもなりにくいです。
・長持ちさせたい!という方へ
汚れがつきにくく虫歯になりにくい素材でも、歯ブラシがうまくできていなかったり、定期的に歯科医院でのクリーニングを怠っているとよくありません。いずれの材料でも、「二次虫歯にならないように」、「長持ちさせる」ためには装着後のメンテナンスがとても大切です。